会社役員の交通事故について

交通事故に遭われて、その治療のために会社を休業しなければならなくなった場合には、「休業損害」というものが発生してきます。

ここで、交通事故の被害者が会社の取締役である場合、保険会社から「取締役の方の休業損害はお支払いできません」と言われた、といった相談をお受けすることが少なくありません。

これは、会社の取締役などの役員報酬は、休業の有無と関係がない役員という地位に対する報酬、企業経営者として受領する利益配当的部分であるため、治療期間中に職務が出来なかったとしても休業損害を請求出来ない、という考え方を根拠にしているようです。

1 会社役員の休業損害についての考え方

しかし、日本における株式会社の大多数は、小規模で閉鎖的な会社であったり、いわゆる一人会社であることが多く、会社の役員とはいっても、会社の業務の大部分、場合によっては業務のすべてを当該役員が行っている場合が多いのが現実です。実際に相談をお受けする会社役員の方も、このような場合が多いです。

そこで、会社役員の休業損害算定にあたっては、その報酬の中に、①企業経営者として受領する利益配当的部分と、②労働の対価部分があるものと考え、②労働の対価部分については、休業損害が発生するという考え方が実務上とられています。

そして、②労働の対価部分の認定は、会社の規模・利益状況、当該役員の地位・職務内容、年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額、事故後の当該役員他の役員の報酬額の推移、類似法人の役員報酬の支給状況等を参考に判断されます。

2 裁判例など

裁判例においても、役員報酬に占める労働対価部分の認定に関し、上記判断要素を検討した上で、役員報酬の全額を労働対価部分であると判断したものや、80パーセント、50パーセントなど割合的に労働の対価部分と判断したものがあります。

例えば、名古屋地判平成16年4月23日では、役員であった祖母の死亡にともない、取締役に就任した後も、従前と同様に作業現場に出て、現場監督を行ったり、重機の操作作業をするなど従業員同様の勤務をしていた上、従前の給与額と同額の報酬を得ていた事案において、その報酬の全額が労働の対価であると認定されています。

私が関わった案件でも、従業員数名の会社の代表取締役の方の休業損害について、その100パーセントを労働の対価部分として保険会社に認めてもらったものがありました。取締役の休業損害を検討する際には、会社の規模や取締役の業務内容を見るのは勿論、報酬額や利益状況の推移などの裏付資料を検討することが必要不可欠となってきます。

同様の問題でお悩みの方は、一度、相談にお越しいただければと思います。

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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