争続を防ぐ3つのコツ~NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク

いつも読んでいただき,ありがとうございます!

今回は,11月7日に東濃信用金庫主催,とうしん学びの丘エールで行われた「遺言・相続セミナー」で気づいた「争続」と言われる相続での紛争を防ぐために大切なことをお伝えします。

 講師は,NPO法人遺言・相続リーガルネットワークに所属する,遺言・相続の分野に詳しい川﨑弁護士でした。

このNPO法人は,日本弁護士連合会から派生し,遺言相続の啓蒙を目的とする弁護士を中心に構成された非営利団体です。
 
私は,以前「相続でもめないために,今できること」をブログで連載していましたが,今回,改めて知っておくと良いと思うことがありました。


今自分が亡くなったら,最初に困ることは?
遺言を使って,紛争を回避するには,○○が有効?
紛争の可能性を下げる自筆証書遺言+○○とは?

 

1 最初に困るのは葬儀

今回のセミナーは,実際の相続場面をストーリー化した動画を見ながら弁護士が解説しました。

老いた父が亡くなったとき,最初に生じた問題・・


それは「葬儀費用」をどうやって作るか?でした。

外に出てしまった長男。お金はあまり持っていない。
一緒に父と暮らし,仕事は辞め,介護をしていた長女。けれど,あまりお金はない。

どこから,葬儀費用を出したらいいのか?

苦労して,長時間かかって父の通帳を探し出し,

亡くなった父の預金からだそうとするけれど,口座が凍結されて様々な書類を揃えないと出せない,と言われる・・・


金融機関によっては,「葬儀費用」と分かれば応じてくれるケースもあるけれど,断られることも少なくない。
川﨑弁護士も,口座を調査するだけで4~5ヶ月かかることもあると言われた。


これを防ぐには,どうしたらいいのか?

ひとつは,「遺言」で葬儀を主催する人(喪主)を指定して,葬儀費用を払い戻す権限を与える,ということも大切だと思います。
けれど,動画を見ていて改めて思ったのは,事前に通帳の場所が分からないと,遺言書を書いていても払い出すために苦労しそう,ということ,です。

「エンディングノート」というようなしっかりした方法までは難しくても,どこに通帳があるのかは記載して,相続人(特に,葬儀を主催して欲しい人)に伝えておくといいと思いました。

もっとも,生前に預金通帳の場所を知らせることは何となく財産を狙われるようで不安,期待されるようで嫌,という方もいらっしゃるのではないかと思います。

その場合には,鍵のかかる場所に通帳の置いてある場所を記載した紙を保管し,その鍵は自分が肌身離さず管理する(鍵の場所は伝えておいてもいいでしょう)方法もあるかな,と思いました。

今でしたら,パソコン上にデータとして残し,暗号をかけ,信頼できる人(葬儀を主催して欲しい人など)にだけ教えてパソコンは自分が管理しておく,などの方法もあるかな,と思いました。

ちなみに・・私の住む多治見市を含む中部地区の葬儀費用の平均はいくらか知っていますか?
データによると,250万円前後のようです。

みなさんの子どもさんは,その費用を自分で立て替えて払ってくれそうですか?
もし,今,父,母が亡くなったら,葬儀費用の支払いをする際,困ることはありませんか?

 


2 付言

川﨑弁護士は,「遺言」は,親から子どもへの「最後のラブレター」と言っていた。

なので,「遺言書」に書くことが,財産の分け方だけであるのは,いかにも味気ない,と真剣に言っている姿に感銘を受けた。

そのため,「遺言書」を書きたいと相談に来られた方には,3ヵ月間くらい時間を戴いてゆっくりと記載内容を相談し,子ども達など相続人に伝えたいメッセージを練り上げているそうです。

その記載を「付言」「付言事項」と言う。


弁護士の発想としては,どの遺産が誰に相続されるのか,という法的な効力こそ大切で,法的な効力がない「付言事項」は無くてもいい,なぜ,法的に無駄なことを書こうとするのだろう・・とさえ思うことも多い気がする。

けれど,確かに遺産の分け方だけ書いてあったら,なぜこういう分け方にしたのか,もし,私が相続人なら,受け取ったときすっきりしない,ということもあるかなと思いました。

なので,遺言書で適切な「付言」があれば,紛争を減らせるかも,と改めて思いました。


書く際のポイントとしては,「相続人への非難」ではなく「感謝の気持ち」を伝えること。

生きている間には,色々衝突することもあったかも知れないけれど,最後に残された言葉が「恨み言」ではあまりに悲しい。


今回使用した動画の事案であれば,「介護をしてくれた長女に感謝しているので,この遺言を記載しました」というようなことでしょうか。

一方で私は,一緒に不動産・相続問題に取り組んでいる不動産鑑定士の山村さんが言っていた「遺産をもらわない相手にこそ,感謝の言葉を」いう発想も大事かな,と思います。

遺産はもらえなくても,心から愛していたことを記載してくれて,「おまえはしっかりしていて心配が無いから」なんて言われたら,ちょっと誇らしくさえ思うかも,と思いました。


みなさんは,「遺言書」という最後のラブレターに何を残しますか?

父,母がなかなか遺言書を書いてくれない・・・というお話,悩みもよく伺いますが,
子どもとして,父,母に「遺言書」を書いて欲しい,と思っている場合にも,財産のことばかりを話すと抵抗も大きいと思うので,まずは遺言書で,子ども達に残しておきたい言葉を書いて欲しいと伝えるのもいいかもしれません。

その後に,子どもとして,父,母の残してくれた遺産を,父や母が望む方法で出来るだけ使っていけるようにしたい,葬儀なども要望があれば,そのようにしたいと思うから・・などと伝えるのはいかがでしょうか?

 


3 動画の利用

遺言書を書くことが,紛争を回避したり,少なくしたりすることは,私の以前のブログでも書いてきました。

そして,その遺言書は,自分で書く「自筆証書遺言」ではなく,公証役場で公証人が作成してくれる「公正証書遺言」の方が,いいというお話もしてきました。
(公正証書遺言のメリット,自筆証書遺言との違いについて,詳しくは,相続でもめないために,今できること~Part2も参考にしてみて下さい)


しかし,遺言を書きたいと言われている方の余命が1週間・・といった,緊急的な場合,どうしたらいいのでしょうか?

川﨑弁護士は,まずは直ぐに「自筆証書遺言」+「動画」撮影をしたそうです。
これによって,自筆証書遺言の弱点であり,よく紛争の争点となる「本人の真意に基づく遺言なのか」「(認知症だったけれど)本当に判断能力≒遺言を作成する能力はあったのか」などという争いを防げる可能性が上がります。

その上で,川﨑弁護士の場合,ぎりぎり亡くなる前に「公正証書遺言」も作成できたそうです・・
公証人さんにお願いして,スケジュールをなんとか調整してもらったようです。


公正証書遺言を作る場合であっても,動画を作成すると,「付言」以上に子どもさん達への思い,メッセージも伝わるかも,と思いました。

公正証書遺言は多くのメリットがありますので,弁護士としては,出来るだけ公正証書での遺言をお薦めしているところですが,一方でデメリットとしては,費用がかかる,手間がかかる,その結果,なかなか作成に至らない,ということがあります。
なので,比較的気楽に作成できそうな「自筆証書遺言」+「動画」から入る,というのもいいかなと思いました。


公正証書は作成が面倒・・・と思われる方は,まずは,「自筆証書遺言」から始めるのはいかがでしょうか?
例えば,成人したお孫さんがいらっしゃったら,一緒に子どもさん(お孫さんからすると父,母)に残すメッセージとして,サプライズのように楽しく動画も作成できたらいいですね。

 


まとめ 死も楽しく迎えられたら


愛する父,母が亡くなったら・・・私だってとても悲しい。
だから,愛する人の死を楽しく迎えられる・・ということはあり得ないと思う。

けれど,そんな中で,もし,亡くなった後に,楽しそうに動画で最後のメッセージを語る父や母の姿を見ることが出来たら・・
少し心が癒やされるかもと思いました。

ユーモアのある父や母なら,亡くなった後に,ユーモアを交えたビデオメッセージを発見して,見ることができたなら,見ていると楽しくなって,こちらも悲しみから早くに立ち直れるかも・・と思ったりしました。

私はキリスト教じゃないので,詳しくは知らないけれど,アメリカでは,平服で葬儀に参加し,比較的明るい雰囲気であること,牧師が“Let’s celebrate”(祝いましょう)と言って,歌を歌う,等と聞いたことがある。

 

「紛争を回避するために」仕方なく,とかではなくて,

子ども達の未来のことを思って温かい気持ちになったり,動画を作成することで面白い気持ちになったりして,

もっと気軽に,もっと積極的な意味で自分の死を準備することも楽しめたらいいな・・と思います。


「思いやり相続~もめない相続は愛」に関する記事で書いたように,これからは,
遺言書の作成が自分の子ども達への最後の愛を伝える手段,最後の思いやりを伝える手段として,また,自分らしく最期まで生きる手段として使われたらいいなと思います。


今回のセミナー主催者である東濃信用金庫さんのお話でも,事前にご相談いただければ,亡くなった時点での葬儀費用の払出しへの対応,生前の計画的・自動的な財産の贈与も可能だとのこと。
東信さんは,今回のセミナーでも触れられた「信託」も力を入れているので,相談して下さいと言っていました。

11月15日の「いい遺言の日」の相談も利用出来ますので,気軽にご相いただけたらと思います。

 

それでは,このブログが読んで下さったみなさまにとって「争続」を防ぐためのヒントとなりますように。

また,「遺言書」などの死への準備が,もう少し,明るく,取り組んでもらえるようなきっかけとなりますように。

 

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

 

 

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
著書「離婚調停は話し方で変わる」は,Amazonランキング「法律」部門ほか5部門で第1位を獲得。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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