労働問題第30回目 労働組合の組合活動について

労働問題第30回目(最終回)は、労働組合の組合活動についてみていきます。

今回で労働問題について考えるブログも一区切りです。長らくお付き合いいただきありがとうございました。


争議行為以外の団体行動の正当性についても、その目的、主体、態様を中心に判断されることになりますが、特に問題となる態様面の正当性について考えてみます。

 

まず、①時間的側面です。就業時間内の組合活動は正当性が認められないのが原則です。

次に、②場所的側面です。事業場内の組合活動は、使用者の施設管理権に基づく制約に服することになります。

加えて、全体として、③目的と手段の正当性といった労働契約上の誠実義務に基づく制約があるということです。

 

それでは、順に見ていきましょう。

 

 

1 時間的側面(職務専念義務による制約)

 

組合活動と独立してなされた就業時間内の組合活動が、労働契約の本質的義務である職務専念義務に違反しないかという問題です。これは、典型的には、労働者が就業時間中に労働組合の要求などを書いたリボンやワッペンを着用する業務自体の阻害とならないように思われる組合活動について問題となります。

 

この点、民間企業の事案である大成観光事件(最判昭和57413日)は、ホテル内で組合員が「要求貫徹」又は「〇〇労組」と記入したリボンを就業時間中に約5日間にわたり着用するというリボン闘争について、職務専念義務を根拠に正当性がないとされています。

 

もっとも、職務専念義務を、精神活動のすべてを職務にのみ集中すべきとするような厳格なものと解することには批判もあり、この判例には「職務専念義務といわれるものも、労働者が労働契約に基づきその職務を誠実に履行しなければならないという義務であって、この義務と何ら支障なく両立し、使用者の業務を具体的に阻害することのない行動は、必ずしも職務専念義務に違背するものではないと解する。そして、職務専念義務に違背する行動にあたるかどうかは、使用者の業務や労働者の職務の性質・内容、当該行動の態様など諸般の事情を勘案して判断されることになる。」との伊藤正己裁判官の補足意見が付されていることに注意が必要です。

 

その後の裁判例を踏まえても、例えば、業務が接客業でありリボン・ワッペンが客の目に触れることになるかどうか、リボン・ワッペンの記載内容や大きさから客に対してどのような印象を与えるかといった観点から、業務に具体的支障が生じるおそれがあるかどうかという視点から、その正当性を判断することが必要となると考えておいた方が無難です。

 

 

2 場所的側面(施設管理権による制約)

 

組合活動は、使用者の施設内において行われることが多いので、使用者の施設管理権との緊張関係が生じてきます。例えば、労働組合の組合員が使用者への要求事項を書いたビラを事業場の壁に貼るといったビラ貼りに対し、使用者は施設管理権を根拠としてその組合員を懲戒処分とすることができるかという問題です。

 

この点、国鉄札幌運転区事件(最判昭和541030日)は、国鉄の従業員である国鉄労組の組合員が、就業時間外に、一般の目に触れない国鉄の職員ロッカーに組合の団結力昂揚のためにおこなったビラ貼りをしたことを理由として懲戒処分を課した事案において、「労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで…企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであつて、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。」と述べています。

 

 

3 目的・手段の正当性(誠実義務に基づく制約)

  

  以上に見てきたリボン闘争、特にビラ貼りといった組合活動の場面において、その記載の目的や内容が、会社の名誉や信用を不相当に毀損するものであってはなりません。

正当性が認められるかどうかは、その記載内容が、㋐使用者の労務管理政策、㋑使用者の経営方針、㋒使用者側個人に向けられたものであるかにより結論も変わってきます。

㋐の場合には、組合の本来の関心事項であるので、摘示した事実が真実であるとか、真実であると信じるにつき相当な理由があれば正当性が認められ、㋑の場合には、労働条件・労働者の待遇と関連して全体として摘示した事実が真実であれば原則として正当性が認められると考えられます。一方、㋒の場合には、内容が真実であっても正当性は認められないというのが一般的解釈のようです。

この点、中国電力事件(最判平成433日)は、電力会社に勤務する労働者が、「原発の社員は地元の魚は食べません」、「放射能がみなさんの頭の上に降ってきます」などの記載のある原子力発電所の設置に反対する趣旨のビラを配布したことに対する懲戒処分の適法性が争われた事案において、「労働者が就業時間外に職場外でしたビラの配布行為であっても、ビラの内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をし又は事実を誇張、わい曲して記載したものであり、その配布によって企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなどの場合には、使用者は、企業秩序の維持確保のために、右ビラの配布行為を理由として労働者に懲戒を課することが許される」と判断しています。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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