労働問題第29回目 労働組合の争議行為について

労働問題第29回目は、労働組合の争議行為についてみていきます。

ちなみに次回は、労働組合の組合活動について確認して、全30回の労働問題シリーズも終了です。

 

 

1 争議行為とは

 

 争議行為とは、労働組合が労働者の要求の実現や抗議を目的として行われる集団行動をいいます。

争議行為としては、同盟罷業(ストライキ)、怠業(サボタージュ:意図的に仕事の能率を低下させる行為)、作業所閉鎖(ロックアウト)その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものを言います(労働関係調整法7条)。この争議行為は、憲法28条により保障された団体行動権に由来するものです。

 

 

2 争議行為の効果

 

①刑事免責

労組法12項は、「刑法第35条(法令又は正当な業務による行為は罰しない)の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって、前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と定めています。正当な争議行為は、刑事法の違法性が阻却され、刑罰を科されないことになります。

 

②民事免責

労組法8条は、「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し、賠償を請求することができない。」と定めています。ストライキやサボタージュは、労働者の労務提供債務の不履行に当たるため、債務不履行責任ないし不法行為責任が生じ得ます。しかし、正当な争議行為に対しては、刑事免責と同様に違法性が阻却され、使用者は組合に対して債務不履行責任や不法行為責任を追及することはできないことになります。

 

③不利益取扱の禁止

正当な争議行為を行った組合員に対し、解雇や懲戒処分を課すことは不当労働行為に該当するため許されません(労組法71号)。

  

  このように、争議行為は正当なものでなければならないので、その目的・手段が正当な争議行為の範囲を逸脱するものについては、刑事・民事の免責は及びません。

 

 

3 争議行為の正当性

                             

それでは、争議行為の正当性は、どのような観点から判断されるのか見ていきましょう。

 

①目的の正当性

正当な争議行為と認められるかどうかは、当該行為の目的が何であるかも考慮対象となります。争議行為は団体交渉上の目的遂行のために行わなければならないので、純粋な政治ストや同情スト(他企業のストを支援する目的のスト)、経営事項に関するストについては、正当な争議行為とはいえないという見解が有力です。

 

②手続の正当性

 争議権は、団体交渉における具体的折衝を進展させるために保障されたものであるために、正当な争議行為の開始というためには、団体交渉を拒否したとか、団体交渉における要求に対して拒否回答をしたことが原則として必要です。

 また、労使間に信義則上存在するフェアプレーの原則からすれば、争議行為の開始には、その内容、開始・終了時期を明確にする通行をするべきだと考えられます。

予告を経ない争議行為や、予告に反した争議行為は、労使関係における信義則違反とされる場合が多いものの、企業運営に及ぼした影響等を考慮して個別具体的に判断されているようです(日本航空事件(東京地決昭和41226日)は、具体的に判断した結果、抜き打ちストについての正当性を認めています)

 

③手段の正当性

基本的に、提供を完全に停止する(ストライキ全般)、不完全な停止(怠業)など消極的態様にとどまる限りは、原則として正当性が認められると考えられています。しかしながら、使用者の備品等を破壊したり、使用者側に暴力を振るうといった積極的有形力の行使を伴う場合、正当性が認められません。

ピケッティング(スト参加者が、非参加者や取引先当に対し、呼びかけ、説得等の働きかけを行う行為)については、消極的態様にとどまるものはなく一定の行動を伴うことになるので、正当性が認められるかについては、厳格に判断される傾向にあります。

 

民事に関する判例を見てみます。御國ハイヤー事件(最判平成4102日)です。

 

⑴ 事案

  タクシー会社Xに雇用され、組合の役員であるYらは、Xからの回答に納得ができず、A組合の指示により、X社の車庫に赴きタクシーが搬出できないようにゴザなどを敷いて座り込んだりする方法により48時間ストを実施した。スト終了後、X社はタクシー6台を2日間にわたって使用できなかったとして不法行為に基づく損害賠償請求をした。最高裁は、Yらのピケッティングの手段に正当性がないと判断した。

 

⑵ 判断

  ストライキは必然的に企業の業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであって、不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されず、これをもって正当な争議行為と解することはできないこと、また、使用者は、ストライキの期間中であっても、業務の遂行を停止しなければならないものではなく、操業を継続するために必要とする対抗措置を採ることができるのは、従来の判例の趣旨とするところである。

そして、右の理は、非組合員等により操業を継続してストライキの実効性を失わせるのが容易であると考えられるタクシー等の運行を業とする企業の場合にあっても基本的には異なるものではなく、労働者側が、ストライキの期間中、非組合員等による営業用自動車の運行を阻止するために、説得活動の範囲を超えて、当該自動車等を労働者側の排他的占有下に置いてしまうなどの行為をすることは許されず、右のような自動車運行阻止の行為を正当な争議行為とすることはできないといわなければならない。右タクシー等の運行を業とする企業において、労働者は、ストライキの期間中、代替要員等による操業の継続を一定の限度で実力により阻止する権利を有するようにいう原判示は、到底是認することのできないものである。 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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