労働問題第28回目 労働組合との団体交渉について(その2)

労働問題第28回目は、引き続き「団体交渉」について見ていきたいと思います。

 

 

1 団体交渉の進め方

 

 団体交渉の出席者、人数、交渉日時、場所などのルールについては、これといったルールがあるわけではありません。労働組合の中には、結成通知と同時に、即時の交渉を求めてくることがありますが、これに応じる必要はないということです。また、徹夜やあまりにも長時間の団体交渉に応じる義務もなく、2時間程度で区切ることも合理性があるでしょう。人数についても、会場の都合からある程度の制限の行うことも可能ですし、労使対等の原則から同数程度とすることも合理的でしょう。

 要は、社会通念上許容される範囲内で、ルール作りを進めればよいのです。

         

 

2 不当労働行為について

 

労組法7条に規定される不当労働行為を行ってはならないこと、不当労働行為には、①不利益取扱い(1号)、②団体交渉拒否(2号)、③支配介入・経費援助(3号)、④報復的不利益取扱い(4号)といった類型があることは前回見ました。

 

今回は、③支配介入について少し考えてみます。労組法73号によると、支配介入とは、「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」と規定しています。

 

労働組合の「結成」に対する支配介入となり得る行為としては、組合結成のあからさまな非難、組合結成の中心的人物の解雇や配転、従業員への脱退や不加入の勧告や働きかけ、組合結成に対して親睦団体を結成させることなどが挙げられます。

労働組合の「運営」に対する支配介入となり得る行為としては、組合活動家の解雇や配転、正当な組合活動に対する妨害行為、組合に対する懐柔行為や組合切り崩し、別組合の結成援助や別組合の優遇などが挙げられます。

 

 

3 使用者の意見表明と支配介入について

 

労働組合のあり方や活動に対する使用者の意見表明について、どういった場合に支配介入となるかというのは、非常に難しい問題です。なぜなら、使用者にも言論の自由があるからです。この点については、現在の実務上は、①発言の内容、②それがなされた状況、③それが組合の運営や活動に与えた影響、④推認される使用者の意図などを総合して、支配介入の成否を具体的に判断するとされています。

 

会社代表者が、従業員とその父兄の集会において、労組が企業連に加入したことを非難し、脱退しなければ人員整理もあり得ると述べたことは、組合運営への明白な支配介入であるとしています(最判昭和29528日)。

①労働組合の自主性に関する運営の方針について、②組合員多数の参加する集会において、①③不利益の具体的内容を示唆していることから、④支配介入の意図があり、支配介入と認められるわけです。

 

郵便局長が、自宅で職員たち懇談するなかで、組合の闘争活動を批判し、同席した課長補佐も当時結成準備中の別組合への加入を進めた行為について、確かにその公正さは疑われるが、使用者にも言論の自由があるので、支配介入には当たらないとしたものもある(最判昭和581220日)

①労働組合の争議行為といった運営に関する事項ではあるけれども、②自宅における懇親会の中での発言であり、③組合の運営や活動に大きな影響を与えたものとはいえず、④局長の意見表明も保護されなければならない反面、支配介入の意図も認められないということでしょう。

 

  よく問題となるのは、組合のストライキの動きに対する使用者の意見表明です。

  組合のストライキの動きに関しては、使用者側にも、事業運営についての意見や方針を表明して協力を求める自由がありますので、そのような表明・協力要請の域を超えて、組合員を威嚇したり、動揺させたりするには至らなかった場合には、支配介入とはなりません。

 

例えば、会社が経営危機に直面しており、その打開策を従業員に訴える中で、ストをやれば会社は潰れるなどと発言した事案について、不穏当な部分はあるが全体としては会社の率直な意見表明の域にとどまるとされたものがあります。

一方、会社が、団交決裂後、車両声明文を掲載してストライキに対する会社の重大な決意を表明したところ、スト反対派の動きが強まり、スト中断のやむなきに至った事案について、社長声明は組合執行部批判派を勇気づけスト頓挫をもたらした支配介入行為に当たると判断されたものも存在します。

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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