労働問題第27回目 労働組合との団体交渉について

労働問題第27回目からは、集団的労働関係(労働組合関係)について考えてみます。

 

労働法の分野で集団的労働関係法はとても重要であり、かなりのウェイトを占めていますが、一般的にはなかなか馴染がないものと思います。しかし、ある日突然、労働者が組合に加入して団体交渉が始まるということは、どの会社においても起こり得ることです。

 

まず今回は、労働組合や団体交渉についての基本的な事項を見ていきたいと思います。

 

 

1 労働組合とは

 

 労働組合は、憲法28条を根拠とする団体であり、労組法は、その結成や運営に関する事項を規定しています。労働組合は、一般的に労働三権と言われる、①団結権(組合を組織して団結すること)、②団体交渉権(企業と団体として交渉する権利)、③団体行動権(争議行為=ストライキ)を行うものです。

 

 労働組合の種類について、大きく分けると、①企業内組合(一般的な形態)、②産業別・職業別組合(同一産業・職業ごとに横断的に組織される組合)、③合同労組(特定地域において企業・産業にかかわりなく多様な労働者が加入する組合)、④ナショナルセンター(労働組合の全国中央組織)に分けられます。

 

 

2 団体交渉への対応

 

⑴ 義務的団交事項と任意的団交事項を意識する

 

団体交渉とは、労働組合が使用者と対等な立場で交渉を行い、労働条件の維持改善を確立する行為であり、組合の存立を左右する重要な行為ですが、何でも団体交渉として取り上げればよいのではありません。対象事項は、「義務的団交事項」と、任意に団体交渉のテーマとして取り上げるに過ぎない「任意的団交事項」とを分けて考える必要があります。「義務的団交事項」について団交拒否することは不当労働行為となるため、ここはしっかりと意識する必要があります。

 

「義務的団交事項」とは、㋐団体交渉を申し入れた労働組合の組合員の労働条件その他の待遇、または㋑労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項であって、㋒使用者に処分可能なもの、と解されています。

  

  ㋐については、組合員の労働条件であれば、広く義務的団交事項に当たるということであり、賃金、労働時間、休暇、安全衛生、災害補償、職業訓練などが含まれます。個々の組合員の人事に関する事項も、組合員の労働条件などに影響を与えるので義務的団交事項となります(東京高判昭和57107日)。また、非組合員(例えばパートタイマー)の処遇変更が結果的に組合員に影響する場合も義務的団交事項に当たり得ます。

  

  ㋑については、例えば、組合事務所・掲示板の貸与、団体交渉の手続、争議行為の手続などが該当します。

  

  ㋒については、例えば、使用者に処分不可能な事項は対象とならないということです。

 

 

 ⑵ 不当労働行為をしてはならない

 

   労組法7条に規定される不当労働行為を行ってはなりませんので、まずは、どのような行為が不当労働行為に該当するかを理解しておかなければなりません。この場合には、司法救済のみならず、労働員会による救済命令等がなされることになります。

 

  
① 不利益取扱い(1号)

労働者が、労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、労働者に対して、使用者が、解雇・懲戒解雇、配置転換、賃金・昇進等の差別、嫌がらせ、組合員と非組合員を差別することが該当します。

 

② 団体交渉拒否(2号)

使用者が、労働組合と団体交渉することを正当な理由もなく拒否すること。

また、この72号から、「誠実交渉義務」が道実かれます。詳しくは後に見ていきます。

 

③ 支配介入(3号)

会社側が、労働組合の結成や運営に支配・介入することはできません。具体的には、非組合員に対して組合に入らないよう働きかけたり、組合員に対して脱退を要請するなどして妨害することはできません。

 

 ④ 報復的不利益取扱い(4号)

労働者が、不当労働行為の申立てをしたこと、労働委員会に証拠を提示したり発言したことを理由に、会社側が、その労働者を解雇したり不利益な取扱いをすることが該当します。

 

 

3 誠実交渉義務

 

労組法72号は、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を不当労働行為として禁止しています。したがって、使用者は、団体交渉に応じなければなりません。それだけでなく、使用者には、誠実に団体交渉に応じることも求められています。

 

使用者は、組合の要求や主張を聞くだけでなく、それに対し、その具体性や追求の程度に応じた回答や主張をなし、必要によっては、それらにつき論拠を示したり必要な資料を提示すなどして誠実に対応し、合意達成の可能性を模索しなければなりません(カールツァイス事件・東京地判平成元年922日)。

 

典型例を挙げれば、合意達成の意思のないことを最初から明確にした交渉態度や、実際上交渉権限のない者による見せかけのだけの団体交渉、拒否回答や一般論に終始して実質的検討に入ろうとしない交渉態度、組合の要求や主張に対する回答・説明・資料提示などの具体的対応の不足がこれに当たります。

 

もっとも、誠実交渉義務は、妥結まで強制するものではなく、労使双方が議題につき自己の提案・議題・説明を出尽くし、これ以上交渉を重ねても進展の見込みがない段階に至った場合の使用者の団体交渉打ち切りは、義務違反になりません(池田電器事件・最判平成4214日)。

 

 

次回は、団交の進め方について補足していきます。

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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