労働問題第26回目 解雇の有効・無効/具体的ケース

解雇には客観的合理的理由が必要ですが、これまで、以下のようにケース分けして見てきました。

今回は、「整理解雇」について考えてみたいと思います。

 

 ①労働者の労務提供不能・労働能力又は適格性の欠如・喪失

  ア 勤怠不良(←21回目)

  イ 能力不足(←22回目)

  ウ 労働能力喪失(←23回目)

エ 労使間の信頼関係の喪失(←24回目)

 ②労働者の職場規律違反(←25回目)

 ③整理解雇(←26回目・今回)  

 ④ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求

 

 

               

1 整理解雇とは

 

  整理解雇とは、企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇です。これまでに見てきた解雇とは、労働者側には特段落ち度がないという点で決定的に異なるものです。長期雇用慣行が一般的である日本においては、整理解雇に当たっては、解雇権濫用法理の適用に当たって、より厳しく判断すべきものと考えられてきました。

  整理解雇を行うための要件について法律に規定はありません。しかし、これまでの裁判例を検討していくと、整理解雇が有効となるための検討事項として、

 ① 人員陣削減の必要性があること

 ② 解雇回避努力が尽くされていること

 ③ 解雇される者の選定が合理的であること(人選の合理性)

 ④ 事前の説明・協議を尽くしていること

という4要件(要素)を総合考慮して、その有効・無効を判断しています。4つは要件なのか要素に過ぎないのかといった議論がありますが、具体的判断について明確な差が生じるわけではないので、省略します。

それでは、整理解雇を検討する場合に、具体的にはどのような点に気をつければよいのでしょうか?

 

 

2 ①人員削減の必要性

 

そもそも、経営上の人員削減の必要性から解雇するわけですから、まず検討されるべき事項です。

問題は、どの程度の人員削減の必要性が求められるのかという点です。この点については、裁判所は、当該措置をとらなければ「倒産必至の状態」であることまでは求めず、多くは、債務超過や赤字累積に示される高度の経営上の困難から当該措置が要請される程度で足りると考えているようです。裁判所は、企業の経営判断を尊重する傾向にあると言えます。

 

 

3 ② 解雇回避努力が尽くされていること

 

整理解雇は、企業側の都合による解雇であるため、整理解雇が有効になるためには、企業において整理解雇を回避するための努力を尽くしたことが必要とされ、特に重要な要件(要素)になります。

具体的にどのような措置を講じるべきかについては、一般的に、㋐希望退職者の募集、㋑新規募集の停止、㋒配転・出向・転籍の検討、㋓役員報酬の減額、㋔賞与や昇給の停止、㋕時間外労働などの削減、㋖パート社員等の雇止め、㋗派遣・業務委託など外部労働者の整理という点が挙げられます。

このうち、㋐希望退職者の募集については、一般的に、整理解雇に先立って行われるのが通常であることや、従業員のダメージが少なくなることから、重視されます。これを行わないまま整理解雇を行った場合には、解雇回避努力義務を尽くしていないと判断されやすい傾向になるため、注意が必要です。

 

 

4 ③ 解雇される者の選定が合理的であること(人選の合理性)

 

 労働者にとっては重大な解雇という効果をもたらす以上、何故にその人を対象としたのか合理的に説明できる状態にする必要があります。

 具体的な基準として、勤務地・所属部署・担当業務、勤務成績、会社に対する貢献度、愛就職可能性、年齢や家族構成等を勘案して選定されることになります、いずれにしても、恣意的な人員選定は認められず、客観的・合理的な基準により、公平・公正に人選がなされる必要があります。

ですので、例えば、整理解雇に仮託して、労働組合員だけを殊更解雇するような場合には、解雇は無効と判断されることになります。

 

 

5 ④ 事前の説明・協議を尽くしていること

 

整理解雇を実施するのであれば、事前に労働者や組合に対して、なぜ整理解雇が必要なのか、その時期や規模といった内容を説明して協議することで、納得を得られるよう努力する必要が生じます。これらの事前の説明・協議の内容を踏まえて、該当性の検討を行うことになります。整理解雇は、労働者側に問題がない解雇ですから、労働者側から解雇無効を主張されるリスクがあります。よって、安易な判断は行わず、専門家と相談しながら進めなければならないでしょう。

 

 

 

それでは今週も頑張ります!今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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