公益資本主義つくる,これからの日本とは

いつも読んでいただき,ありがとうございます♪
今回は,東濃信用金庫理事長の市原理事長が紹介してくれた本「国富論(原丈人著)」から,気づいたことをお伝えします!

著者は慶應大学法学部を卒業後,スタンフォード大学経営学大学院,国連フェローを経て同大学工学部大学院を修了。
29歳で創業した光ファイバーのディスプレイメーカーを皮切りに,主に情報通信技術分野で新技術を創出する企業の育成と経営に注力されている方。

シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタリストのひとりです。
国連政府間期間特命全権大使,アメリカ共和党ビジネス・アドバイザリー・カウンシル名誉共同議長,財務省参与なども歴任されてきた方で,グローバルに経営者として,また,企業の支援の経験を多数されてきた方です。

そのような優秀オーラ溢れる方が述べている「公益資本主義」の考え方。
これまでの,「資本主義」の考え方の欠点を補い,日本の企業が生き残っていくための方法は何でしょうか?
「公益資本主義」の考え方とは?

やはり,「経済学者」という立場だけでなく,ご自身で「経営者」として体験されている方,ベンチャーの支援をされている方の話,というのは説得力がありますね…

どうしたら,日本の中小企業が,世界を相手に生き残れるのか?
グローバルな社会で生き残るために必要な,一番大切な要素とは?
日本の中小企業を支援する金融機関,商工会議所などは,何に注目して支援をしたらいいのでしょうか?

 

1 「企業は株主のもの」は間違い

アメリカ流の資本主義の元になっているのは「会社は株主のもの」という考え方。
企業の目的は株主にとっての価値,つまり「株価」を上げること。
これが,進んで,短期的に株価を上げられることが優れた経営と見なされる風潮があった。
そのために,エンロンなどの大企業の会計不正がおこったり,CEOが自分自身の評価,ストックオプションでの利益を得るために,必要以上のリストラをして,経費を削減して一時的な利益を上げることなどがおきていた。

現在は,株主が投下したお金をどれだけ効率良く活用しているかという指標(ROE)が,株価とより連動性を持つようになっているところ,分子(利益)を大きくするのでは無く,分母(資産から負債を除いた株主資本)を小さくするという方法で,株価を上げるテクニックが使われるようになった。
従業員ごと工場を外注したり,リースにするなどで資産を圧縮したり,「モノ言う株主」とよばれるファンドが,資産を売却して現金の配分などを要求するなどがおこる。

これらは,本当の意味での企業の立て直しや活性化を目的にしているものではなく,短期的に株価を上げることが目的となってしまっていることの問題点があるとのこと・・
数字に基づく経営の合理化のための「手段」としてつくられた指標ROEが,ROEをあげることそのものが「目的」になってしまっているのですね。

これらは,企業は「株主のもの」という考え方からきているから,見直すべきと著者は言っています。
本来,企業は従業員・顧客・仕入れ先を含めたパブリック(公的)なもの。
株式を長期的に持ち続けて,企業を支えようとする株主ならば「企業の持ち主」とも言えるけれど,短期的な株価の上昇を望んで,最高値で売り抜けることしか考えない「株主」のものと考えるのは間違いとしています。

かといって,もちろん,資本主義の考え方を全否定するわけではありません・・
欠点を補う評価方法としての考え方を「公益資本主義」と考えているようです。

私は,法学部で会社法(当時は商法)を学びましたが,その中で,会社は株式を有する者が所有している,つまり,株主の所有物なのだ,という考え方が頭に残った。
そのため,所有と経営を分離して・・・取締役会がある,など。
でも,最終的には会社は株主の所有物だから,株主か会社のことをどのようにしてもいいんだな,と思っていた。
法的には,多分間違いは無い・・でも,これを突き進めて,株主が会社の利益とは関係無く,自分自身の利益のみを追求していったとしたら,日本の企業が長期的に成長が見込めないのかも,と改めて思いました。

「企業は株主のもの」は間違い,とは言いにくいけれど・・・,それだけを追求しない方法が必要だと思いました。
皆さんは,どのような考え方で,株式を持っていますか?

 

2 公益資本主義における企業の価値基準

著者は,ROEに変わる企業価値の評価基準として,以下の基準を提唱しています。

①富の分配における公平性
②経営の持続性
③事業の改良改善性

①は,アメリカでは経営者の報酬が,一般社員の平均賃金の200倍以上となっていることなどから,「不公平感」があり,従業員の会社へのコミットメント,参加意識が低下することを問題にしています。
出来るだけ不公平感,嫉妬の無い公平な企業の方が,豊かな「創造性」を発揮しやすい,ということ。

②は,経営サイドと従業員が長期的なビジョンや目標を共有していることで,従業員は「幸福感」を高める。経費や人件費を削減して,数字を整えることばかり考えていると「幸福感」が下がる,ということ。
持続性」が重視されることで,ワクチンの研究など,すぐに利益が生まれないような基礎研究でも成果を上げられる。

③コダックやポラロイド社にデジタルカメラの採用をもちかけても,当時の主力の写真フィルムが売れなくなる,ということで採用されなかったように,成功体験を持つ大企業では,「柔軟性」を失い,新しい業態に変化するのが難しくなるということ。


このような①創造性,②幸福感,③柔軟性を高めている会社の企業が値が高い,という評価が一般化するとどうなるでしょうか?
これまでは,単位的な利益を求めて投資していた方々の資金が,「公益資本主義」に基づいた中長期的展望に立った経営を臨める企業への投資へ,資金が流れることになる,としています。

歴史上,奴隷貿易がビジネスとしてもてはやされていた頃は,多くの投資家が資金を投入していたけれど,奴隷制度が非合法化されたことによって,新規は当然ストップしました。
これまで,正しいとされた「価値観」が変わることで,資金の流れも変わります・・・ね。

この指標が実現すれば「全ての会社が中小企業のようになっていく」,「企業が事業を通じて社会に貢献し,貢献したことによって儲け,更に儲けることで社会に貢献する」,新しい資本主義の実現に繋がるとしています。


確かに,中小企業では,所有と経営が一致している,とも言われます。
なので,経営者と従業員の距離も比較的近く,会社の利益を上げることが,経営者や職員の幸せに繋がるとイメージしやすいです。
一方で,大企業になると,,,段々とそれが薄くなってしまう。

中小企業の場合,今のところ,非公開会社が多く,一般株主による投資は難しいため,金融機関の融資が資金源となることが多いです。
その際,以前は目に見えるモノ,不動産などの資産を重視して融資をしてきたわけですが・・・
国も力を入れていて,「事業性評価」として,目に見えないモノに対する価値を的確に把握して,融資できるように促しているところですね・・

社会一般の株価について,評価方法を一気に変える事はできないでしょうが,私自身は,もし,投資するのであれば,どういう会社なのか,ここに挙げているような①~③の視点で投資していきたいな,と思いました。
なかなか,その判断が難しいのではありますが・・・


そして,やはり,大企業であっても大事なことは,③の柔軟性,チャレンジ精神,変化に対応していく力が大切なことが改めた分かりました。
中小企業であっても,経営者はいざというときのリスクを取るべき立場なので,富の分配を全く同じにする,ということは非現実的で,経営者のモチベーションも下がると思うけれど,一緒に社会貢献をしていく仲間として,従業員も公平感や幸福感を持て,自発的,創造的に仕事に関わっていけるようにすることが必要だと思いました。
そのためには,「ビジョン」の共有も必要ですね。

皆さんの会社のビジョンは何ですか?職員のモチベーションを保てる「公平感」はありますか?

 

3 日本の中小企業に未来はあるか?

著者は,日本の場合,中小企業の金融は銀行等からの間接金融に頼らざるを得ない。
当たり前のことですが,銀行からの借り入れは,絶対に返さなければならないお金です。

つまり,リスクの多い新規の研究開発費用などには使いにくい,使うべきで無いもの・・になってしまいます。
これに対し,アメリカではベンチャーキャピタルが資本を提供してきた,という経緯があります。

しかし,日本にはそのような制度は無い。
そのために,新たに創業したベンチャー企業に継続して投資支援が出来,なおかつリスクに見合うリターンを出すことが得きる仕組みとして,「リスクキャピタル」という仕組みが必要と言われています。
詳しい説明は,この本を読んでいただきたいのですが,こういった投資をしやすい環境を作ることが大切,と言われています。

そして,もう少し広い視野で見ると・・
今まで日本は,自動車,電気製品を中心とするハードウェア,アニメや漫画,食文化といった「ソフト」も輸出してきたけれど,
これからの日本が輸出するものは,システム(制度),モデル,ルール(規則)と言っています。

高性能,高機能な電気製品をつくっても,最後には中国に負けてしまっていた・・
けれど,鉄道技術のように,ただ車両の性能だけで動くのでは無く,信号計,ポイントの切り替えなどの様々な「システム」を組み合わせることによって複雑で正確な運行が可能となるものは,単なる「モノ」では無く,システムをパッケージとし,更に制度まで作ることで輸出できるのが日本の強み,と言います。

一度右側通行というルールができた地域には,左側通行を前提としたモノを組み込むことが出来ないように,一度ルール,システムを導入してもらえば,他国,他社が参入してくるのが難しくなる,と言っています。

議会制度,学校制度,弁護士や会計士などの制度も開発途上国,新興国に輸出しうる・・・

著者の視野は,本当に広くて,私の想像力を越えていますが・・・
日本の制度そのものを変える投資の仕組み作りは,私たちがすぐに出来ることは限られるでしょうが,制度,システムを「モノ」とパッケージとして売る,という「考え方」に意識することは出来る,と思いました。

みなさんは,「モノ」をシステム,制度と一緒に売ることが出来ていますか?
私たち弁護士の仕事は,改めて考えると,代理人をするという一連の活動(システム)の中に,書面の作成,裁判所での発言など,個別の業務(サービス)が組み込まれている・・・とも言えるかな。
そのために,弁護士を依頼した場合,その中の何か一つの業務だけを誰か別の弁護士に頼む,ということは難しいですね・・
私という「弁護士システム」を採用してもらえれば,途中で参入されることはあまりない・・・

では,そのシステムを採用してもらうのに必要なことは何でしょうか?
これが「公益資本主義」の考え方にも繋がる,その人のため,相手のため,ひいては社会のためになる,と思ってもらえることのような気がします。
それを伝えるのに必要なことは・・著者も大企業でも大切だと言っている「事業を通じて社会の役に立つ」というその人の信念,志のようなものだと改めて思いました。
このような世界の最先端で活躍し,実績のある著者が「信念」「志」に基づく経営を支持しているのは,とても勇気づけられました!

やっぱり,本気の「信念」「志」を伝えることが大切なのですね。


まとめ グローバル人材にとって一番大切な要素

今回は書ききれませんでしたが,著者は実際にバングラデシュなどでベンチャーキャピタリストとして実績があり,世界的に成果をあげている。

そんなことからよく「グローバル人材にとって1番大切な要素は何ですか?」と聞かれることもあるそう。

それは・・

「違いを認めたうえで,その違いをよく説明していく能力」とのこと。

英語や中国語といった語学力は,あくまで道具として使い,むしろ「自国語でしっかりと考えを表現できるような教育の徹底」が必要,としています。
それが,語学力よりも,はるかに大切!と言っています。

私も,離婚調停での「話し方」を考える中で,相手と自分は「考え方」「価値観」が違っていることを意識し,相手方や調停委員にも,分かるように伝える事が大切だと実感しています。


自分の価値観が正しいと思って押しつけるのではなく,多様な価値観があることを認められること,その違いを「言葉」で説明する能力がグローバル人材として必要なのですね。
そのためには,まず自分自身の価値観をよく把握して,相手に説明できなければいけない・・

著者は,日本人は,西洋人と比べて,相手と相手の文化を尊重して受け容れるという素地がある・・と言っています。
他の人,周りの人を気遣う日本人。その意味では,良い面もあるのですね。

あとは,日本人があまり得意で無い,自分の考えをしっかり表現でき,違いを説明できる能力が養われると,鬼に金棒ですね。
これまで私は,周りに合わせることばかりを意識する日本人の考え方が変わっていく必要があると思っていたけれど,非難すべき点ばかりでは無くて良い点でもあることに気づきました。

そして,その良い面も伸ばしつつ,弱点を補えるような教育制度が日本で浸透していくといいなと思います。
私も教育委員として,そして,ひとりの親として,そういう大人に,地元の子ども達が育っていけるよう支援していきたいなと思いました。

東濃信用金庫の市原理事長のオススメの本は,私が普段はあまり読まないような視点で書かれた本が多くて,とても視野が広がります。
地域の中小企業を支援するため,又,日本の企業が生き残るために金融機関が支援すべきことは何なのか,ということを常に考えて下さっているのだな・・とも感じて嬉しくなります。

地域の商工会議所などが国とは違う独自の支援をすることは難しいかも知れませんが・・・
公益資本主義の評価基準に基づいて,高い評価の企業にメリットがあるような支援策があるといいと思います。
また,この視点からして改善の余地がある場合には,適切なアドバイスをしてもらえたら・・企業が中長期的に反映していくように思いました。


今回のブログが,地元の経営者の皆様,経営者を支援する皆さま,子育て中のお父さん,お母さんに「グローバル社会で地域の企業が生き残っていくため」「グローバルな人材として活躍する人になるため」の「ヒント」となりますように!!

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!

 

 

この記事を書いた弁護士

木下貴子
木下貴子
岐阜県多治見市で初の女性弁護士となり18年目。
岐阜県立多治見病院など地元事業者の顧問弁護士を務め,法律のみならず経営に関するアドバイスも行っています。
個人のお客様には,離婚,相続,不動産案件を多く取扱っています。
相談は,親身,気軽,自分で決めるをモットーとしています。お気軽にご相談ください。

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