労働問題第20回目 有期雇用契約の無期転換ルールと雇止めについて

労働問題第20回目は、有期労働契約の終了(雇止め)についてです。

その前段階として、有期雇用契約の無期労働契約への転換(無期転換ルール)について考えてみます。

 

1 無期転換ルールについて

平成25年4月1日施行の労働契約法改正により、無期転換ルールが法定されました。無期転換ルールにより、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより、 期間の定めのない労働契約に転換されることになります。通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する(更新する場合を含む)有期労働契約が対象となります。そうすると、平成30年4月1日から、無期転換の発生が見込まれることになるので、それまでに、会社としての制度の検討、就業規則の整備などの対応をする必要があります。

無期転換ルールは「契約自由の原則」に対する修正です。「契約自由の原則」からすれば、契約期間1年の労働契約を繰り返すことで、期間期間が無期に変更されることはあり得ません。しかし、このような法改正に至ったのは、有期雇用契約が無期労働契約となっている実態があること、それにもかかわらず有期労働契約による雇用不安定に対する危惧が広がっていることに対して、いよいよ国が乗り出したということです。会社としては、この法改正を消極的に受け止めるよりも、有期社員が会社の事業運営に不可欠で定常的な労働力であることを直視して、有期労働者のモチベーション向上といった部分で積極的に捉えていった方がよいでしょう。

 

2 無期転換ルールによる注意点・事前準備

 

まず、法律の規定を見てみます。

労契法18条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
 

労契法18条1項前段によると、無期転換ルールの対象は、「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約」なので、週2日で5時間づつの勤務を続けているパートタイム労働者も要件を満たせば対象となります。そして、無期転換後は「同一の労働条件」となりますが、「当該契約について別段の定めがある部分を除く」とされているので、使用者が無期転換後の労働条件として、所定労働時間を週4日以上6時間以上といった水準を定めることは可能です。

この「別段の定め」には、労働協約、就業規則、個別の労働契約の3つが考えられます。ここで重要なのは、労契法18条1項前段が、要件に該当した労働者から無期転換の申込があったときに、使用者は承諾したものとみなすとされていることです。申込の時点で、現に締結している労働条件と同一の労働条件で無期転換しているので、その後に就業規則において「別段の定め」をしても遅いということです。会社としては、無期転換する場合に、労働時間といった労働条件について一定の水準を設定する場合には、早めに準備しておかなければならないので注意が必要です。

無期転換後の労働条件について「別段の定め」をしておくべきなのですが、これまで1年更新が繰り返されてきた労働者が、いきなり無期となると、雇止めのリスクが減少することからモラルリスクが生じることを心配する声もあります。その場合には、給与面において業績を反映させたものとするなどの工夫が必要でしょう。また、所定労働時間や職種・勤務地の異動があるといった労働条件について見なおすことも可能です。しかし、無期転換を思いとどまらせる目的をもった労働条件の設定は公序良俗に反し無効ですし、人材の流出は会社にとってマイナスです。円滑に無期転換ルールを導入できるような制度設計にしなければなりません。

 

3 雇止めが無効となる場合

 

有期労働契約において、使用者が契約更新を行わず、契約期間の満了により雇用が終了することを「雇止め」といいます。
雇止めについては、重要な最高裁判例があり(最判昭和49年7月22日ー東芝柳町工場事件、最判昭和61年12月4日ー日立メディコ事件)、一定の場合に雇止めを無効とするルール(雇止め法理)が確立していたところですが、こえが労働契約法第19条に規定されました。

労契法19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

①当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
 
19条①は、有期契約が反復更新されて期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態となった場合(東芝柳町工場事件のタイプ)で、②は①のようには言えない場合でも労働者が雇用継続につき合理的期待を有していたと認められる事情がある場合(日立メディコ事件のようなタイプ)です。②については、制度創設以来自己都合退職以外には更新拒否が行われた例がない会社において、1回目の更新で認められた例もあります(大阪高判平成3年1月16日)。
 
雇止め法理にひっかからないためには、①更新手続を厳格に行うことが何より重要です。また、②更新を期待させる言動を行わないことが重要になりますね。
 
 
それでは、今週も最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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