労働問題第19回目 労働契約が終了するとき(解雇・退職)

労働問題第19回目は、労働契約が終了する場面について網羅的に見てみます。

労働契約終了の際には、問題が生じることが多いので、今回は総論として全体を概観して、次回以降に詳細について考えてみたいと思います。

 

労働契約が終了する場面をどのようにまとめるかは悩ましいところですが、大きな枠組みとして「解雇」と解雇以外の終了とを分けると分かりやすいです。ご承知のとおり「解雇」は使用者が一方的に労働契約を終了させることを指します。解雇以外の終了の場面を、ここでは「退職」と総称として使用することとします。

 

 

1 解雇(使用者から一方的に行われるもの)

 

解雇は、①懲戒解雇、②普通解雇に分かれます。また、③有期労働契約の場合には別途の考慮が必要です。

②の普通解雇は、㋐狭義の普通解雇と、㋑整理解雇に分けて考えることができます。

それぞれ要件が異なりますので、以下見ていきましょう。

 

①懲戒解雇

 労働者の非違行為に対する懲戒処分のうち、最も重いものが懲戒解雇です。懲戒については、15回目、16回目で既に考えてみました。懲戒解雇は、懲戒処分としての性格と、解雇としての性格の双方を有するので、解雇予告手当(労基法20条)による解雇規制も働きます。そうすると、懲戒解雇と普通解雇との差異は、就業規則や合意に基づく退職金不支給・減額の対象となるかどうかという点が大きいといえます。

 

②㋐普通解雇

 普通解雇は、労働者に解雇の原因(勤怠不良、能力不足、協調性欠如等)がある場合を指します。労働者に原因がない場合は、㋑の整理解雇に当たります。

 普通解雇に関しては、労基法、労契法によるルールがありますので、これらに抵触することは許されません。詳細については、次回以降に確認していきますが、以下の3つの視点からチェックすることが必要になります。

 ⑴ 解雇権濫用に当たらないこと(労契法16条)

 ⑵ 法律上解雇が制限されている場面に当たらないこと(様々な法律で規定されています)

 ⑶ 解雇予告の手続きが行われていること(労基法20条)

 

②㋑整理解雇

 整理解雇は、労働者に原因はないものの、使用者側の経営上の都合で行われる解雇を指します。労働者に原因がないのですから、普通解雇の場面に比べてより高いハードルがあることはイメージしやすいと思います。

 整理解雇については、過去の裁判例から、ⅰ人員削減の必要性、ⅱ解雇回避努力義務を尽くしたこと、ⅲ被解雇者選定の妥当性・相当性、ⅳ手続きが妥当性という4つの要件を具備しなければならないとされており、そのハードルはかなり高いものです(東洋酵素事件-東京高判昭和541029日)。

 

 

③有期労働契約の場合

 

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、あらかじめ使用者と労働者が短期間の契約期間を合意しているので、使用者は「やむを得ない事由がある場合」でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできません(労働契約法第17条)。この「やむを得ない事由」というのは、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断さるので注意が必要です。あと数か月の期間満了までは雇用継続して下さいという流れになり易いということですね。

また、有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないこととされています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」<厚生労働省告示>)。

 さらに、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(期間満了時に契約が更新されないこと)に、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合には、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されることになるので注意が必要となります(労契法19条。日立メディコ事件-最判昭和61124日-)

 

 

 

2 退職

 

①合意解約

 

 「合意解約」は、使用者と労働者の合意によって労働契約を解約することです。合意ですから、一方からの申込と、相手方の承諾という意思表示の合致によって成立するものです。当事者双方の意思によるので、解雇予告(労基法20条)などの制限はありません。

 合意解約については、退職願を提出した労働者が、後になってそれを撤回したり、退職の意思表示の瑕疵を主張するというような形で問題となることが少なくありません。労働者からの合意解約の申込みの場合、特段の事情のない限り、使用者の承諾の意思表示があるまでは撤回を認められます。そうすると、使用者側としては、使用者側の誰がどうした場合に承諾となるか、合意解約の申込を労働者から受ける際の説明をどのようにして、どういった記録を残しておくかという点が重要となります。

 

②辞職

  

 「辞職」は、労働者が一方的に雇用契約を終了させることをいいます。使用者側が一方的に労働契約を終了させる「解雇」と反対の場面です。上記「合意解約」と比較すると、使用者に到達した時点で、解約告知としての効力が生じ、撤回はなし得ないという点が異なります。そうすると、問題となるのは、労働者の辞職の意思表示に瑕疵(強迫、錯誤、詐欺など)がある場合ということになります。

 なお、期間の定めのない労働契約においては、労働者は2週間の予告期間をおけば理由を要することなくいつでも労働契約を解約することができるとされています(民法627条1項)。

 

 

それでは、今週も頑張ります。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

この記事を書いた弁護士

田中敦
田中敦
岐阜県土岐市出身,多治見北高・北海道大学卒。
瑞浪市役所勤務後,法科大学院に入学し,弁護士資格を取得。
法科大学院では労働法を専攻。
現在は,交通事故案件,労働案件(事業主側)を中心的に取り扱っています。

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