多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

会社の保証人を外れる方法とは~経営者保証ガイドライン

会社の保証人を外れる方法とは~経営者保証ガイドライン

009みなさま,おはようございます!
今日は,41girlsの無料相談会です。多治見商工会議所で「奨励賞」を戴き,応援を嬉しく思っています。

さて,
今回は,
「会社の保証人を外れる方法」について,お伝えします。

日本弁護士連合会では,現在中小企業支援として,「経営者保証ガイドライン」従った保証債務の整理・解除に力を入れております。

私も先日,東京の弁護士が実際に取り扱った先進的な事例の報告を学びました♪
内容は,専門的,かつ複雑になるので細かくは書きませんが,今回は,経営者保証を外れるためのポイントをお伝えします。

経営者個人や親戚などの第三者が会社の保証人をしていることで,思い切った経営が出来ない,事業を承継したくない,という精神的負担が問題となっています。
また,清算すべき場合であっても,保証人に迷惑をかけるために,早期に破産手続きなどに踏み切れず,却って事業を悪化させ,保証人に迷惑をかけてしまう事例も多々あります。
(経営者の精神的負担の記事は,こちらに書きました)

中小企業の経営者が,会社(法人)の借入金の保証人から,どうしたら外れることが出来るのでしょうか。
第三者が,親族の会社,個人事業主の保証人になっている場合,外れることは出来るのでしょうか?

 

1 法人と経営者の関係を明確に分離

ポイントの第1は経営者個人と法人の業務,経理,資産所有等に関して明確に区分・分離されていることです。
具体的には,法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与,配当,オーナーへの貸付等)を社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備することです。
つまり,法人(会社)と経営者(社長)個人の一体性の解消に努めることが必要になります。

中小企業の場合,金融機関からすると,経営者(社長)個人が保証人になることが一般的となっている理由は,多くの場合に会社(法人)の業務と個人で事業をしている業務が混同していたり,経費の混同があったり,法人から個人に対して,過分な配当,役員報酬などがなされている,経営者個人の土地,建物を会社がタダで借りて経営している,など,法人そのものの資産が経営者個人に流出していたり,法人の経営が,個人の資産に頼っている実態があるからです。

そのため,会社だけでなく,「会社と一体化」している経営者個人からも保証してもらうことで,金融機関としてはそのような実態に関わりなく,融資することが出来ます。

従って,反対に,経営者の個人保証を外そうとすると,まずは,「会社(法人)と経営者個人の関係を分離」することが必要となります。

そのためには,顧問の税理士などに相談して,会社と個人の混同がされた経理部分をチェックしてもらうと良いと思います。

 


2 財務基盤の強化

現在は,経営者個人が保証をすること(親戚などの第三者の場合も同じです)で,主たる債務者である会社(法人)の返済能力,借入れへの信用力を補完されています。
しかし,会社の財務状況及び経営成績の改善を通じて返済能力の向上があったと認められれば,経営者個人や第三者の保証に頼る必要がなくなります。
「黒字経営」が重要ですが,どのように財務状況や経営成績・キャッシュフローがよくなっているのか,客観的に金融機関に示すことが必要になります。

これも,保証人になった当初と比べての変化,現時点でのキャッシュフローを前提とすれば,会社だけで十分返済が可能であることの説明が必要となるので,顧問税理士などに相談して,これまでの実績の変化,今後の計画を盛り込んだ資料を作ってもらうことが良いと思います。

 


3 情報開示・経営の透明性確保

会社(法人)は,資産負債の状況(経営者個人,第三者保証人のものを含む),事業計画や業績見通し及びその進捗状況等に関する債権者から情報開示の要請があった場合には,正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明することにより,経営の透明性を確保する必要があるとされています。
つまり,一般的に,中小企業の経営計画,資産等の情報は不正確で信頼性が乏しいと思われていることになります。

そのため,開示情報の信頼性の向上の観点から,外部専門家による情報の検証を行い,その検証結果と合わせた開示が望ましいとされています。
この外部専門家には,やはり,税理士,公認会計士,弁護士などが入ると思います。
また,開示・説明した後に事業計画・業績見通し等に変動が生じた場合には,自発的に報告するなど適時適切な情報開示に努めるとされています。

以前紹介した「経営者保証を外れた事例」でも,従業員まで,会社の「決算書」「数字」を理解し,会社外の人にも説明できるレベルにまであったことが高く評価されていました。

会社の経営の情報開示・透明性を社内,社外に対していつでも説明できる状態にしておくことが大事なようです。


まとめ

この記事を読んで,自分も会社の保証人をはずすことができないだろうか?と思われた方はいるでしょうか。
これまでは,債権者(金融機関)に頼んでも,「無理です」と断られることが一般的だったと思います。
まだ今も大都市では,少しずつ事例は積み上がっているものの,直接交渉して,経営者保証を外すのは難しいと思います。

今回,弁護士の研修で「経営者保証ガイドライン」を使った,保証人の債務整理の方法として,「特定調停」を利用できることを学びました。
学んだ事例そのものは,会社が破産,特別清算,特定調停などにより負債を整理する場合の個人保証の整理の仕方でしたが,会社経営がうまくいっている場合にこそ,経営者保証ガイドラインで保証人を外す余地があっていいのではないでしょうか。
法人化してすぐ,保証人を外す,というのは難しいでしょうが,現在は民法改正により,おおざっぱに言いますと,5年ごとに経営者の個人保証を更新していると思います。
その際に,税理士に相談し,今まで述べた1~3が確保されているならば,これを示して,更新の際に,経営者の保証を外したいと話してみてはどうでしょうか。
それでも,交渉が難しい場合には,弁護士に相談していただけたらな・・・と思います。

まだ,このような事例を私自身は体験しておりませんし,全国的にも事例を聞いたことはありませんが,「経営者保証ガイドライン」の本来の趣旨からすると,この場合に,裁判所の民事調停を利用することもありえるのではないでしょうか・・・
また,事業承継の際にも,同様に金融機関は保証の見直しを検討すべきとされています。

もし,先進事例になってみようという勇気のある方(笑)は,ご相談していただけたらと思います。


また,地元岐阜県の東濃地区ではきいたことがありませんが,会社も特定調停を利用して負債を整理し,保証人を同時に特定調停を利用して負債を整理することで,破産よりも債権者にとっては多くの返済が出来,保証人個人の資産も破産の場合よりも残せる事例(雇用保険の給付期間分の現預金・華美でない自宅など)もあるようです。

こちらの場面はまさに,破産は避けたいので,やめたくても事業がやめられなくなっている場合の「廃業支援」として,弁護士が法的に関われる専門分野になるので,ご相談いただけたらと思います。


それでは,今回の記事が,会社の保証人から外れたい,と思っている経営者の方々,第三者の方々のお役に立てますように♪
 

最後まで読んで下さってありがとうございました。