多治見ききょう法律事務所

弁護士 木下 貴子 ブログ

経営者に必要な資質~海賊とよばれた男

経営者に必要な資質~海賊とよばれた男

008いつも読んでいただき,ありがとうございます。
今更ですが・・・「海賊とよばれた男」を読みました(本を朗読するサービスFeBeで聴きました)。
「海賊とよばれた男」の主人公,国岡社長のモデルは出光興産の創業者と言われています。

多治見ききょう法律事務所の顧問先に「石油業」をされている地元企業がありますが,先日,シェル石油と出光興産が合併するとの記事を見たので,出光興産ってどんな会社なのだろう,と思い,ずっと気になりつつ読んでいなかった「海賊とよばれた男」を聴きました。

田中弁護士が以前読んだときに感想を書いていましたが,「経営者」,「弁護士」の目線で読むと,「経営者」「弁護士」には,こういう資質が必要なのだろうな・・・と違う視点での「気づき」がありました。

と,いうことで,私が感じた「激動の時代を生き抜く経営者の資質」,「弁護士の使命」について,お話ししたいと思います。

  • 無理そうな融資を認めてもらうために必要な経営者の資質とは?
  • 激動の時代を生き抜くために必要な経営者の資質は?
  • 弁護士は経営者のために何ができるのか?

1 強い信念・信頼の積み上げ

国岡社長は,中間搾取を排し「生産者と消費者を直結して双方の便宜を図る」という強い信念を持っていた。
また,外国に日本の石油販売を支配されないように,外国の石油会社に経営指導権を絶対に渡さない・・
そのためには,直接石油を販売する設備を日本全国につくるため,多額の資金が必要となる。

何度も何度も,資金繰りに窮する。
倒産を覚悟することも・・・

しかし,その度に,誰かが助けてくれるのです・・・

自分が多額の借金を背負ってでも,日本国のため,日本国民のため実現したい,という強い思い,私たちが聴いても,すごいと心を動かされる「信念」。

信念に感動し,心から応援したい,と感じたとき,人は動かされるのですね。
通常であれば,とても通らない融資も,融資担当者の心が動かされ,上司の心が動かされる・・・

その背景には,それまでに,他の会社が投げ出した大変な石油くみ上げ作業を職員達が続けた姿があり,「あの職員達のいる,あの,会社なら」という信頼により,これも評価されていた。

「小説」なので,全てが本当ではないのかも知れませんが・・・
振り返れば,自分自身も,子どもの頃から必死になって,こうしたい,助けて欲しい,と思って意志を伝えたときには,,誰かが気づいてくれて,助けてくれました。
そうして,今の自分があると感じます(全然,出光興産とはレベルが違いますが・・・)。

以前,中津川のサラダコスモの社長が融資をする金融機関担当者から「あなたは,数字と一緒に夢を語れる人」と言われた,との話を聞きました。

融資する側からすれば,返済をしてもらわなければならないので,返済できる計画,予測を説明できることは経営者として必要な資質だと思います。
しかし,巨額の融資を受けるときなどには,やはり,融資担当者の心に響く「信念」を伝えられることが経営者として必要だと感じました。その信念が「口だけの夢物語」と取られないような,普段からの信頼される行動,実績も大切だと思います。

みなさんの会社には,自分のためだけでなく,社会のために実現したい「信念」がありますか?
経営者,職員が信念に基づいた行動がとられていますか?

・・・私も,日々自分の信念に基づいた行動が出来ているか,大事にしたいと思います。

2 時代の先を読む目

国岡社長は,石炭が主なエネルギー源として使われていた時代,「石油」はまだまだエネルギー源として使えない,と周りから言われていた時代から石油が今後は,石炭に変わるエネルギー源になると予測。

戦後の日本は激動の時代・・・次々に状況は変化していく。

一度に多くの石油を運ぶことで,運賃を下げ,単価を下げるためにいままでにないような大規模なタンカーを製造。
アメリカの石油会社と提携しないため,どんどん石油を仕入れることが難しくなっていく中,当時,国交もなかったイランから石油を仕入れることを決断。
自社で原油から石油精製が出来るようにならなければ,いつか仕入れできなくなることを見込んで大規模な製油所を設立。

多くの資金を必要とする決断を,先を見越して次々に勇断して,実施していく・・・

そのためには,常に日本全体,世界全体の動きについて注視をし,広い視野で知識,情報を得ておくことが必要なのですね。

・・・これまで私は,どちらかというと,「自分で予測して行動してきた」というより,これは!というインスピレーションで動いたり,周りからのご縁で運ばれてここまできた,という気がします。

しかし,最近は「弁護士」「士業」「ご相談者」だけでなく,色々な形で経営をしている経営者と「仲間」として付き合うことになって,違う視野で物を見えるようになったと感じます。これからさらに,今の「仲間」とも違う方々と会い,広く知識を得て,先を予測した行動をしていきたいと思います。

みなさんの会社は,日本全体,世界全体の動きを予測して,先を見越した行動が出来ていますか?

3 弁護士は経営者の英断を支える

マニアックなところですが,
私は,この話に出てくる「柳井弁護士」のところが一番好きです。

今まで日本では取り扱ったことのない事案。
超高級な書籍を,今後使う可能性はないかも知れないのに「丸善」で購入する国際弁護士(笑)

イランの石油を国岡社長が購入し,日本に搬入しようとした際に,それはイギリスの物だから引き渡すよう「仮処分」の裁判が日本で提起された。
その際に,国岡社長の代理人として登場するのがこの弁護士です。

その高級書籍に載っていた事例を出して,裁判所に訴え,裁判では国岡社長側が勝訴。

この場面を聴いて,弁護士として心躍りました♪
事例は,同じような事案で,イギリスの裁判所がその取引は,有効としたものだったので,公平性から本件でも有効とされるべき・・・ということだったと思います。

裁判所は日曜日が休みなので,すぐに決定が出ないよう,日本に石油が到着するのが土曜日になるように調整したり,といったことも,弁護士をしていると「なるほど~」と共感できて,わくわくしながら聴きました。

私は,弁護士事務所の「経営」もしていますが,法律専門職として「弁護士」をしています。

その「弁護士」としての醍醐味は,国岡社長のような先進的な経営者が,これは「社会のために正しいことをしている」という信念の元,法律上どうなるのか,細かいところは検討せずに,英断した行動の後始末をすることにあると,つくづく思いました。

多治見ききょう法律事務所の顧問先企業は,今までに他の企業がしたことのない取組にチャレンジする企業も多いです。
そのことをとても誇りに思います。

私たち弁護士は,関わる中で,リスクを予測しつつも英断を応援し,「後始末は私たちに任せて下さい」と言えるようでありたい,と改めて思いました!!

みなさんの会社は,どんなチャレンジしていますか?
弁護士に後始末を任せたいような,業界初めての,心躍るチャレンジありますか?

 

まとめ 立場によって気づくことは違う

この本を聴いて,どの立場で聴くかによって,感じることは違うと思いました。
田中弁護士の感想も是非,読んでみて下さいね。

職員の立場,経営者の立場,弁護士という専門職の立場,経営者の妻の立場,職員の妻の立場・・・

同じ本を職場で読んで,職員や家族と感想をシェアしてみるのも,自分が見落としている違う視点に気づけていいのではないかと思いました。
そうすることで,職員や家族の気持ちも分かり「組織」「家族」として,気持ちを一つに進んでいける気がします。

みなさんは,どんな立場で,どんなことに気づかれましたか?
是非,周りの方とシェアしてみて下さいね!

このブログを読んで下さった皆さまが,「激動の時代を生き抜くための経営者の資質」「専門職としての使命」に気づくきっかけとなりますように…

今回も最後まで読んで下さって,ありがとうございました!